リード獲得は企業の営業・マーケティング活動の出発点とも言える重要な施策です。しかしながら、リード獲得の目的や具体的な手法について自信を持って説明できるビジネスパーソンは意外に多くありません。
特に新型コロナウイルスの感染拡大以降はリード獲得のオンライン化が進みました。
従来のオフライン手法からオンライン手法に切り替えたいものの、いったいどのような手法でリードを獲得すればよいか分からないと頭を抱える企業担当者が多いのが実情です。
本記事ではリード獲得の意味と目的を説明したうえで、代表的なリード獲得手法をオンライン手法とオフライン手法に分けて紹介します。
さらに記事後半では、リード獲得のためのコツやリードナーチャリングの重要性についても解説します。リード獲得について深く理解したい方はぜひ最後までご覧ください。
リードとは自社の製品やサービスに興味を持っており、将来的に顧客になる可能性のある見込み客を表すビジネス用語です。
つまり、リード獲得とは様々な手法を駆使してリードを増やしていく営業もしくはマーケティング施策を意味します。
リード獲得は、「創出」や「誕生」を表す英単語のジェネレーションと、リードを組み合わせてリードジェネレーション(Lead Generation)と呼ばれるケースもあります。
何をもってリード獲得とみなすかは企業によって、あるいはビジネスシーンによって異なります。一般的には、リード獲得は次のような顧客情報を集めることを意味します。
リード獲得は顧客数の増加、ひいては自社の売上や利益の増加を目的とする施策です。
BtoBであれBtoCであれ、リード獲得の主眼が顧客数および売上アップであることには変わりありません。企業や事業の成長を目指す上で、リード獲得は欠かせない施策といえます。
企業が顧客を獲得するプロセスは、リード獲得(リードジェネレーション)、リード育成(リードナーチャリング)、リード選別(リードクオリフィケーション)の3つのフェーズに分けられます。
リード育成とは、獲得したリードに対してメルマガやDM、各種セミナーなどを通じて情報を提供しつつ、自社商材への興味関心を高めさせる活動を指します。
リード育成を実施することで、リードは自社商材の魅力やメリットを具体的にイメージできるようになり、購買や契約といったアクションにつながりやすくなります。リードの成約確度を高めるうえで、リード育成は必要不可欠です。
育成したリードの中から、特に案件化しやすいリードを見極めて営業部門に引き渡すフェーズはリード選別と呼ばれます。どれだけリード育成に注力しても、すべてのリードが成約につながるわけではありません。
したがって、スコアリング手法を用いてリードの購買意欲を点数化し、点数の高いリードのみを営業部門に引き渡すことにより、営業部門は成約確度の高いリードへのアプローチに専念できるようになります。営業を効率化するためには、客観的かつ厳選したリード選別が重要です。
これらの営業活動のスタート地点こそがリード獲得です。リードを獲得できなければ、その先のリード育成もリード選別も絵に描いた餅となり、当然ながら売上も発生しません。営業活動が成功するかどうかは、最初の入り口となるリード獲得にかかっていると言えます。
ここまで、リード獲得の意味と目的について解説してきました。それでは、企業は実際にどのような手法でリードを獲得しているのでしょうか。
PCやスマートフォンが普及し、誰もがインターネットにアクセスできるようになった現代では、企業がWeb広告からリードを獲得する事例も当たり前になりました。
Web広告には次のような種類があり、それぞれ費用感やメリット・デメリットが異なります。
Web広告はインハウス運用(自社内製化)する企業もあれば、専門的なノウハウを持つ広告代理店から運用サポートを受ける企業もあります。
Web広告を実施する際は、自社のターゲットにあった手法かつ予算に余裕を持って実施できる手法を選別するのが重要です。
オウンドメディア、特に自社独自のWebメディアを運用することでリード獲得を目指す企業も存在します。
(後述するSNS運用も厳密にはオウンドメディアに含まれます)
オウンドメディアと聞いてもイメージしづらいかもしれませんが、私たちが日ごろ何気なく閲覧しているWebサイトの中には多くのオウンドメディアが存在します。
例えば、食品メーカーが運営するレシピサイト、クリニックが運営する美容サイト、アウトドアメーカーが運営するコラムサイトなどがオウンドメディアの事例として挙げられます。
オウンドメディアでは、資料をダウンロードしたり記事を最後まで読んだりするうえで顧客情報の入力を必須化することで、リードを獲得できます。
後述する他社メディアへの広告掲載に比べてノウハウや期間が必要ですが、メディア運用が軌道に乗れば他の施策に比べて少ないコストで安定してリードを獲得できるようになります。
TwitterやInstagram、TikTokなどのSNSを活用して自社ブランドの認知を広げ、リード獲得につなげる企業もあります。
Twitterはいいねやリツイートによる二次拡散力が強いため、バズれば多くのユーザーからの認知を獲得することが可能です。
また、自社アカウントのフォロワーかつ自社のツイートをリツイートしたユーザーのうち何名かに特典を与える通称「リツイート企画」でリード獲得を目指すケースも珍しくありません。
Instagramはアパレル系ブランドや飲食店など、ビジュアル要素を重視する企業に多く活用されています。
Instagramユーザーはトレンドに敏感で情報収集に積極的な若年層が中心であるため、若者をターゲットとしたビジネスと親和性の高いSNSと言えるでしょう。
オウンドメディアとは対照的に、他社が運営するメディアに自社サービスの広告を掲載してもらうケースもあります。
他社メディアへの広告掲載は、メディア設立および運用のスキルを必要としないため、オウンドメディアに比べると着手しやすい施策です。
ただし、他社メディアを選定する際は、自社商材のキーワードに対して検索結果の上位に表示されているメディアか、メディアの読者層が自社商材のターゲットと合致しているかなどを見極める必要があります。
企業が顧客のリード情報を獲得するためによく使う手法に、資料ダウンロードがあります。
自社商材のメリットや導入事例、費用などを詳しく記載した資料を用意し、自社ホームページや他社メディアから資料をダウンロードできるようにします。
この際、ユーザーに電話番号や連絡先、所属企業といった顧客情報の入力を要求することで、リード獲得につなげる手法です。
自社商材に興味や関心を持ってくれたリードを効率的に集められるため、その後のリード育成やリード選別につなげやすいのが大きな強みであると言えます。
上述の資料ダウンロードに類似した手法がホワイトペーパーです。ホワイトペーパーはサービス紹介資料とよく似ていますが、実はそれぞれ目的が異なります。
サービス紹介資料では自社商材の概要や機能、料金などについて、サービス提供側企業の視点から紹介されていることが一般的です。
一方で、ホワイトペーパーではサービスを利用する企業やユーザーの立場から課題を分析し、その解決策となるノウハウを提示します。
ブログコンサルティングサービスを提供する企業を例に考えましょう。この企業がサービス資料を作る場合、タイトルと目次は次のようになります。
タイトル「〇〇社のブログコンサルティングサービスについて」
目次
一方、同じ企業がホワイトペーパーを用意する場合、次のようなタイトルと構成が考えられます。
タイトル「【無料】100社が顧客獲得に成功したオウンドメディア運営ノウハウ大全」
目次
ホワイトペーパーはユーザーのニーズを出発点としているため、自社サービスを認知していないユーザーでも手に取りやすいのが特徴です。
なおかつ、ホワイトペーパーを手に取るということは自社サービスで解決できる課題を抱えているという意味に等しいため、後々の商談化や案件化につながる可能性のあるリードを獲得できます。
自社の製品やサービスについてまとめた文章をプレスリリースとして配信することで、リード獲得が可能です。
具体的には、プレスリリースの文章内に自社ホームページへのURLを設置し、ホームページを訪問したユーザーに資料ダウンロードを促すといった手法が挙げられます。
日本国内で代表的なプレスリリース配信サイトとしては、PR TIMESや@Pressなどがあります。
新型コロナウイルス感染拡大以降は、展示会のオンライン化が進みました。
従来の対面型展示会では名刺交換やアンケート記入といった手法でリードを獲得していたように、オンライン展示会でも参加登録時に企業情報を入力してもらうことでリードを獲得できます。
オンライン展示会では、実物のデモやプレゼンにより自社商材の特徴や他社商材と比べた強みについて詳細に訴求できるため、その後の商談化につながりやすいのが特徴です。
また、対面型展示会に比べて設営準備などの必要はいらず工数が少なく、入場規制もないため、少ない手間とコストで多くのリード獲得が目指せます。
展示会と同様に、各種セミナーのオンライン実施も一般化しています。Web型セミナー、通称ウェビナーでは、申し込み時に参加者に氏名や連絡先を登録してもらうことでリードを獲得できます。
オンライン展示会と同様に口頭で自社のノウハウや商材の魅力を説明できること、実施に必要な手間が少ないこと、一度に多くの参加者にアプローチできることなどがウェビナーのメリットです。
メールマガジンはリード育成に用いるのが一般的ですが、リード獲得を目的にメルマガを配信する企業もいます。リード獲得のためのメルマガは、外部のサイトやメディアが保有する登録者データベースを利用して配信します。
企業担当者をターゲットとしたBtoBサービスのメルマガ配信であれば、日経BPなどのデータベースを用いたりできます。
その他、人事担当者や経理担当者など特定のターゲットに向けてメルマガを配信したい場合は、その分野に特化したサイトやメディアのデータベースを利用するケースもあります。
リード獲得には上掲のオンライン手法だけでなく、オフライン手法も存在します。ここではそれぞれのオフライン手法について、主な特徴を解説します。
インターネットが普及するまで、企業のリード獲得手法といえば看板・新聞・雑誌・テレビ広告が一般的でした。現在でもなお、これらの手法を用いてリード獲得を目指す企業は存在します。
これらの広告を出稿すると、不特定多数のユーザーに対して自社のブランドや製品、サービスを訴求できます。ただし、オンライン施策に比べると膨大な費用がかかる点がデメリットです。
オフラインの、比較的古くから使われてきたリード獲得手法の中でも近年再注目されているのがテレビCMです。
オンラインのBtoBマーケティングではコストを抑えやすい反面、宣伝がどうしてもインターネットを利用する人に限定されてしまいます。
テレビCMでは、多くのターゲットへの認知度拡大やイメージアップを図る事が出来ます。
電車、タクシー、バス、飛行機などの公共交通機関に広告を掲載する手法です。特に電車やバス、タクシーの場合、ターゲットのエリアを絞って広告を掲載できるのがメリットに挙げられます。
年代や属性を問わず幅広いユーザーに自社商材をアピールできる一方で、広告を見たユーザーのうち何割のリードを獲得できたのか分析しづらい点が弱みです。
対面型の展示会では、大規模な会場内に複数の企業がブースを設けて各社の製品やサービスをアピールします。
展示会に参加する人はただ単にオンラインでの情報収集が苦手なだけでなく、複数社の商材をまとめて比較したい、あるいは複数の担当者とコンタクトを取りたいといった背景で参加するケースも少なくありません。
リードと対面してコミュニケーションを取れる展示会は、その後の商談化や案件化につながりやすいといわれています。
業界動向を踏まえて自社商材の導入メリットを解説したり、参加者からの質問に答えたりしながら、参加者に自社商材の導入をイメージさせるのが主な狙いです。
オンラインの開催と異なり、イベント終了後に参加者と交流したり、その場で相談会を行ったりなど、参加者の熱量を維持して次につなげやすくできます。
企業によっては、業務時間外に自社オフィスを開放して社内外問わず参加できるイベントを開催するケースもあります。
具体的には異業種交流会、名刺交換会、勉強会、といった名目でイベントを開き、社外からの参加メンバーとの名刺交換やアンケート回答などを通してリード獲得につなげます。
他のリード獲得手法に比べてカジュアルな場であるため、参加者の心理的負担が少ないのが特徴です。
Eメールではなく郵便物やチラシ、はがきなどの印刷物を使ってリード獲得を目指す手法はダイレクトメールと呼ばれます。
企業名や担当者名を指定してダイレクトメールを配ることで、狙いたいターゲットのリードや商談獲得できます。
ただし、ダイレクトメールの送付には相応の時間や費用が必要で、自動化できないのがデメリットです。
テレアポも昔からよく用いられる営業手法のひとつです。まだ関係を持っていない企業や個人に架電してアポイントや成約を促すアウトバウンド型のテレアポは、テレマーケティングと呼ばれることもあります。
訪問営業の中でも、事前にアポイントを取らずに企業のオフィスを訪問して自社商材を提案する手法は飛び込み営業と呼ばれます。
ほとんどの場合は門前払いされてしまうため、飛び込み営業でリードを獲得するにはかなりの根気と回数が必要です。
オンライン・オフライン問わずリード獲得手法のなかであまり効率的ではない手法といえます。新入社員の研修も兼ねて、現在も飛び込み営業を採用しているケースも存在します。
ここまで、リードとは将来の顧客数増加や売上増加に欠かせないことを解説し、オンライン・オフライン別に主なリード獲得手法を紹介してきました。
どのような手法であれ、リード獲得には共通したポイントやコツがあります。ここでは効率的にリードを獲得するためのポイントを3つ紹介します。
まず、自社の製品やサービスを利用するターゲット層を明確化する必要があります。ターゲット層を明確に定義できれば、数あるリード獲得手法の中から適した手法を選びやすくなります。
ターゲット層を具体的に考えるうえで非常に役立つのが、ペルソナ設計と呼ばれる考え方です。ペルソナとは自社商材のターゲットとなる具体的な人物像を意味し、具体的には次のような項目で構成されます。
ターゲットが明確になれば、次にターゲットに適したリード獲得施策を選定します。
例えば、40代後半〜50代前半で社内決裁者クラスの男性にBtoB商材を訴求したい場合、若年層ユーザーが集まるInstagramといったSNS広告を配信しても効果が期待できないことが多いです。
それよりもリスティング広告でキーワードを絞ってを出稿する方が、ターゲットとするリードを効率的に獲得できると予想されます。
どのターゲットに対して、どのくらいの予算内で、どのくらいの数のリードを獲得したいかで手法は異なります。自社のターゲットに合わせて最適な手法を選びましょう。
ターゲットのペルソナが確定し、リード獲得手法も決まれば、最後にKGIに合わせてKPIを設定します。
※KGI(Key Goal Indicator)とは、ビジネスの目標を定量的に数値化した指標を意味します。KGIを達成するプロセスを定量的に現した指標はKPI(Key Performance Indicator)と呼ばれます
KGIを達成するために、どの広告媒体からどれくらいの数のリードを獲得するか、KPIを細分化します。
【KGI】
10件の成約を獲得する
リスティング広告経由で50万円/月の売上を達成する
【KPI】
成約:10件
▶︎リード選別:20件
▶︎▶︎リード育成:40件
▶︎▶︎▶︎リード獲得:100件
コロナ禍で急速に普及したオンライン型のリード獲得手法は、感染拡大防止の他にも全国のリードにアプローチできる、時間や場所の成約を受けにくいため機会損失を減らせるなど様々なメリットがあります。
ただし、オンライン手法はリード獲得から成約までの検討期間(リードタイム)が長引いてしまう点がデメリットです。
導入費用が高く、成約までに複数の決裁責任者からの承認が必要なケースが多いBtoBサービスの場合、リードが成約前に購入意欲を失ったり競合他社にリードを取られたりするリスクがあるため注意しましょう。
一方、一見すると非効率的に思えるオフライン手法は、自社商材の導入メリットや競合サービスにはない自社独自の特徴、費用感や導入スケジュールなどについて口頭で詳しく訴求できるのが大きなメリットです。
Salesforce社の調査(※)によると、オンライン手法の商談化率は20%以下であるのに対してオフライン手法では約40%のリードが商談化するといわれています。
効率的に良質なリードを獲得するためには、オンライン手法とオフライン手法を織り交ぜた営業戦略を立てるのが重要です。
※参照元:https://www.hipb2b.com/blog/infographic-lead-conversion-offline-vs-online-leads
リードは一度獲得すれば終わりではありません。本記事の序盤で説明したように、獲得したリードはリード育成、リード選別というフェーズを経て成約に至ることではじめて自社の利益につながります。
したがって、獲得したリードを無駄にしないためにはその後のリード育成(リードナーチャリング)が必要です。
リードナーチャリングでは次のような施策を通じて、リードに自社の製品やサービスをより深く理解してもらい、購入や契約を具体的にイメージさせます。
サービスによって異なりますが、獲得時から購買意欲が高いリードは全体のうち1〜2割程度といわれています。つまり、獲得したリードの8割近くはリードナーチャリングを実施しなければ失注してしまいます。
リード獲得に投下した時間と労力を無駄にしないためにも、リードナーチャリングは必要不可欠です。
本記事ではリード獲得の意味と目的を説明したうえで、代表的なリード獲得手法をオンライン手法とオフライン手法に分けて紹介しました。
あわせて、リード獲得のためのコツ、オンライン手法とオフライン手法の違い、リード獲得後のリードナーチャリングの大切さについても解説してきましたが、いかがでしたか。
リード獲得の費用感に関しては、別の記事で詳しく解説しています。リード獲得に必要なコストについてより具体的に知りたい方は、そちらの記事も合わせてご覧ください。