リードは、企業のマーケティングや営業活動において頻繁に用いられるビジネス用語です。しかし、ビジネスパーソンによってはリードの定義を十分に理解できておらず、社内での意思疎通に齟齬が生じてしまうケースも少なくありません。
本記事ではリードという考え方について基本的な定義を紹介したうえで、営業管理プロセスや顧客の購買意欲によってリードがどのように分類されるかを解説します。
「リードという言葉の意味がよくわからない」「より効果的な営業方法を考えるきっかけが欲しい」という方は、本記事の内容を参考にしてください。
リードは営業活動における「見込み顧客」を意味する用語です。
リード(Lead)という言葉が「きっかけ」や「糸口」を意味するように、リードは現時点では自社の顧客ではない、すなわちまだ自社の製品やサービスを購入してはいません。
ただし、将来的には購買や成約に至る可能性があり、自社の顧客となり得る見込み顧客をリードと呼びます。
具体的には、次のような営業対象がリードとみなされます。
上記のように、自社と何らかの関わりがあって「企業名」「担当者名」「メールアドレス」「電話番号」などの情報があり、アプローチ可能な対象がリードです。
リードは見込み顧客を表す用語ですが、何を以て見込み顧客とみなすのかはビジネスシーンによって異なります。
たとえば、直に顧客と接する営業現場では、次のような手法で獲得した見込み客がリードとみなされます。
上記のように、営業現場では「電話や訪問といったオフライン手法を主体とした営業活動によって創出された見込み顧客」のことをリードと呼びます。
ただし、営業マンがただ電話しただけ、あるいは訪問しただけではリードとは呼べません。営業現場においては、ある程度の成約確度が期待できる見込み顧客がリードと呼ばれます。
リードを獲得した後は、商談等のアプローチを通じて受注へと繋げます。
営業用語のリードが「オフラインで接点を持った見込み顧客」を意味するのに対して、マーケティング業界では次のような対象をリードとみなします。
このように、マーケティング業界ではオンライン/オフライン問わず「マーケティング施策の結果として創出された見込み顧客」をリードとみなします。営業用語のリードと比べると、マーケティング用語のリードはより広範囲を対象とするのが特徴です。
マーケティング施策で獲得したリードは営業部門へと引き継がれるのが一般的です。ただし、ここでいうリードは成約確度にかなり濃淡があるため、すべてのリードが成約に繋がるわけではありません。
したがって、後述するリードナーチャリングやリードクオリフィケーションといったリード管理によってリードを精査し、成約確度を高めることが重要です。
リードはまだ購買や成約に至っていないため、そのまま放置していても利益は生まれません。リードを受注へ繋げるためには、集客段階に応じたリード管理・育成が必要不可欠です。
ここでは、リード管理を大きく3つのステップに分けて解説します。また、一度失注してしまったリードに対するアプローチ方法も併せて紹介します。
リード管理プロセスの出発点はリードジェネレーションです。
見込み顧客を表すリード(Lead)と創出・獲得を表すジェネレーション(generation)という英単語からもわかるように、リードジェネレーションとは見込み顧客を集客する段階を意味します。
リードジェネレーションには大きく分けて、オフライン施策とオンライン施策の2種類があります。それぞれの施策の具体例は次のとおりです。
【オフライン施策】
【オンライン施策】
ナーチャリング(nurturing)とは「育成」「大切に管理する」という意味を持つ英単語です。マーケティング業界では、リードジェネレーションによって獲得したリードの成約確度を高める施策を総称してリードナーチャリングと呼びます。
リードジェネレーションの段階ではリードごとの関心度や購買意欲に濃淡があるため、どのリードがより受注に繋がりやすいかわからない状態です。
リードナーチャリングを通じて、リードに自社の製品やサービスをより深く知ってもらうことで、リードが購入や契約をイメージしやすくなります。
具体的には、次のような施策がリードナーチャリングに該当します。
サービスによって異なりますが、リードジェネレーションの段階で購買意欲のあるリードは全体のうち1〜2割程度といわれています。言い換えれば、リードの8割は適切なリードナーチャリングがなければ受注に繋がりません。
集客コストの損失を防ぎ、受注率を高めるためにもリードナーチャリングは必要不可欠です。
リードナーチャリングで育成したリードのなかから、とくに受注確度の高い対象を絞り込む最終段階をリードクオリフィケーションと呼びます。
クオリフィケーション(qualification)という英語が「資格」や「必要条件」を表すように、リードクオリフィケーションでは一定の基準に基づいてリードを精査します。
リードの受注確度を可視化するうえで便利なのが、スコアリングと呼ばれる手法です。
スコアリングではリードの属性や行動、興味関心を定量的に数値化し、どのくらい成約確度が高いのかを分析します。例えば、次のような基準が用いられます。
【ユーザーの属性】
【ユーザーの行動】
【ユーザーの興味関心】
このように定量的な指標で数値化すると、営業マンの経験や勘といった属人的な要素を排した客観的な分析が可能です。スコアリング結果が良いリードには営業部門が優先的に対応できるため、営業活動が効率化されます。
ただし、スコアリング設計は難易度が高く、中途半端に設定しても業務の中で機能しないことは少なくありません。設定経験や統計学の知識などを持つ人がいる場合や、マーケティング会社に相談できる場合が好ましいです。
最後に紹介するのが、リードリサイクルという考え方です。リードリサイクルとは、過去に失注してしまったリードに対して、再び有望なリードになってもらうための営業アクションを意味します。
残念ながら、どれだけリードナーチャリングやリードクオリフィケーションに力を入れたとしても、すべてのリードが受注につながるわけではありません。
営業プロセスの中で失注は避けられない出来事で、一度失注したリードはそのまま放置されがちなのが企業営業の実態です。
しかしながら、失注したリードが再び商談化したり、受注に繋がったりするケースも珍しくありません。
したがって、リードナーチャリングまでのプロセスで失注したリードにはひとまずメールでアプローチする、リードクオリフィケーション以降のプロセスで失注したリードには架電して状況を確認するなど、リードごとのステータスに応じて適切なアクションを取る必要があります。
ここまで、リードという用語の定義とリード管理の4つのプロセスを紹介しました。
ここからは、実際のビジネスシーンでリードがどのように分類されるかについて解説します。
ひとえにリードといっても、その中身は様々です。ここでは、リードを購買意欲の高さで3つのタイプに分類する方法について解説します。
自社の製品やサービスに対して興味関心が強く、購買意欲の高いリードはホットリードと呼ばれます。
ホット(=Hot)リードとはその名の通り、受注につながる温度感が高いリードという意味です。私たちが日常会話で「熱い展開」「胸が熱くなる」など、期待が高まるときに「熱い」という言葉を用いるのとよく似ています。
ホットリードの対義語、すなわち購買意欲が低く受注確度が低いリードはコールドリードと呼ばれます。自社商材に対する興味関心が冷え切っている(=Cold)リードをイメージするとわかりやすいかもしれません。
購買意欲の高さだけでなく、営業フェーズごとにリードを分類する考え方も存在します。ここでは、リードの分類方法を解説します。
セミナーやメルマガなどを通して、マーケティング部門がフォローすべきフェーズにいるリードがMQLです。具体的には、次のようなフェーズのリードがMQLに含まれます。
企業のマーケティング部門はMQLを精査して、次のフェーズであるTQLへとリードを引き渡します。
電話対応(Teleprospecting)を担当する部門がフォローすべきリードがTQLです。電話を通して、情報収集や情報提供を行います。具体的には、次のようなリードがTQLに該当します。
有望顧客として、インサイドセールス部門からフィールドセールス部門に引き渡されたリードがSALです。BANT情報(予算・決裁権者・ニーズ・導入時期)の中から◯個以上聞けているなどの条件をつけます。SALには次のようなリードが挙げられます。
SALに対して積極的に営業アクションを取ることで、後述するSQLへと繋げます。なお、SALの感触が悪い場合は、TQLやMQLに差し戻して再度リードナーチャリングを実施するケースもあります。
SQLとは、フィールドセールスが商談などの営業活動を行った結果、正式に案件化したリードです。具体的には、次のような状態のリードがSQLに該当します。
ここまでリードの分類方法について、「購入意欲による分類」と「営業フェーズによる分類」の2パターンを紹介しました。
アメリカの大手コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱する「心理状態による5分類」も参考までに紹介します。
自社の製品やサービスを知ったばかりのリードは、認知に分類されます。具体的には、自社の広告を目にしたリード、展示会やセミナーに一度参加したリードなどです。
認知フェーズのリードに対して、企業はコンテンツマーケティングやメルマガ配信などの手法でリードナーチャリングを仕掛けます。
リードナーチャリングの結果として自社商材に興味関心を抱いているリードは、親しみに分類されます。ここでは、リードはまだ自社商材の購入や契約を具体的にイメージできていません。
親しみフェーズにいるリードに対して、企業は専用サイトへの誘導やセミナーの開催などを通してさらなるリードナーチャリングを実施します。
自社の製品やサービスの購入・契約を具体的にイメージしているリードは、検討に分類されます。この時点では、リードは自社商材と競合他社の商材を比較したり、社内でサービス導入の予算について会議したりしている段階です。
検討段階のリードに対しては、営業部門が電話や商談などのアクションを通じて自社商材の導入メリットやコストを詳細に提案する必要があります。
検討の結果、自社商材を購入したリードは購入に分類されます。
一見ゴールのように思えますが、この時点ではリードがリピーターになってくれるかどうかはわかりません。購入段階のリードに対してアプローチを継続することで、リピート率の向上が期待できます。
自社商材を購入後、その品質に満足したリードはファンと呼ばれます。
ファン化したリードは、自社商材について好意的な口コミを広めてくれたり、知り合いのリードを紹介してくれたりなど、企業にとって非常に重要な存在です。
ファン化したリードに対しても電話や訪問などを継続することで、さらなる信頼構築に繋がります。
ここまで述べた通り、リードには様々な分類方法があります。いずれにしても、リードは企業に対して将来的な利益をもたらす存在であることに変わりありません。
それでは、実際にリードを獲得するにはどのような方法があるのでしょうか。コロナ禍以降はオンライン商談など営業手法の多様化が進んでいますが、リード獲得方法そのものは2種類に大別できます。
ここでは、主なリード獲得手法としてアウトバウンド型とインバウンド型の2種類を紹介します。
自社発信の営業手法はアウトバウンド(outbound)型と呼ばれます。具体的には、次のような営業手法がアウトバウンド型に該当します。
アウトバウンド型営業は、自社商材を知らない相手に対して認知を広めるうえではある程度の効果を発揮します。ただし、インターネット上に情報が氾濫する現代社会においては、アウトバウンド型営業のみで継続的に利益を出すには限界があるとされています。
自社から外部へ働きかけるアウトバウンド型とは対照的に、リード自らに問い合わせや資料請求などのアクションを起こさせる営業手法はインバウンド(inbound)型と呼ばれます。次のような施策がインバウンド型に含まれます。
インバウンド型の営業手法では、リードが求める情報を一方的に提供した後はひたすら問い合わせを待つだけです。したがって、実際に問い合わせや資料請求を獲得できるまでに時間を要します。
しかしながら。施策が一度軌道に乗ってしまえば、アウトバウンド型よりもはるかに少ない労力で安定したリードを獲得し続けられるのが大きな強みです。
本記事ではリードというビジネス用語の定義を説明したうえで、リード獲得のプロセスや手法、またリードの分類方法について包括的に解説しました。
リードの考え方についてさらに詳しく知りたい方は、リード獲得方法一覧や費用感について詳しく解説した別記事も併せてご覧ください。