BtoBマーケティングを強化し、ビジネス成果を上げるために、「ホワイトペーパー」は非常に有益なツールです。使いこなさない手は、ありません。
ホワイトペーパーを活用したマーケティング手法としてよく知られているのは、
「自社のWebサイトにホワイトペーパーをアップロードして、ユーザーが個人情報の入力と引き換えにダウンロードできるようにし、リードを獲得する」
というものです。
しかし、ホワイトペーパーの使い方は、リード獲得だけではありません。
ホワイトペーパーの本当の価値を理解し、さまざまな手法を身につければ、マーケティングROI(費用対効果)を格段に向上できます。
本記事では、以下のポイントを解説します。
競合他社とは一線を画する、戦略的なホワイトペーパー活用を、実践していきましょう。
最初に、マーケティングにおけるホワイトペーパーとは何か、基本の知識からご紹介します。
ホワイトペーパーは、日本語でいえば「白書」となります。もとは、政府が公表する報告書や政策文書を指す言葉です。
▼ ホワイトペーパー(白書)の例
欧米で、「ホワイトペーパー」の用語が政府発行以外の文書にも使われ始めたのは、20世紀半ばのことです。やがて「マーケティング・ホワイトペーパー」というジャンルが生まれます。*1
とくにBtoBマーケティングの現場では、特定のトピックに関する悩みや問題に対応した、説得力と権威性のある詳細な文書が、ホワイトペーパーとして作成されるようになりました。
やがて、「問題解決のための、高品質な資料」を、 “ホワイトペーパー” の名で無償提供する手法が、有効なマーケティング施策として、定着していきます。
ホワイトペーパーを使ったマーケティング自体は、何十年もの歴史があり、取り立てて新しさはありません。
しかし、
「最近、ホワイトペーパーを使った手法がトレンドになっている」
と感じる方も多いでしょう。
その背景には、2000年代以降、世界中でマーケティング戦略の潮流となっている「コンテンツマーケティング」があります。
ホワイトペーパーで成果を出すためには、ぜひ押さえたいポイントですから、少し詳しく解説しましょう。
コンテンツマーケティングとは、顧客(潜在層から既存顧客まで)に対し、“価値あるコンテンツ” を提供することで、顧客との感情的な結びつきを醸成するマーケティング手法です。
価値あるコンテンツに触れた顧客の心の中に芽生えるのは、たとえばこんな感情です。
最近注目されているホワイトペーパーも、コンテンツの一種です。
顧客にとって価値のあるホワイトペーパーを提供すると、ホワイトペーパーの読者との間に「絆」ができ、その絆が源泉となって、ビジネス上の取引につながっていく、という構図になっています。
単刀直入にいえば、ホワイトペーパーは、会社の宣伝には使うものではありません。
ホワイトペーパーは、自社のプロモーションではなく、顧客の問題解決のために作ることで、価値あるコンテンツとなるからです。
重要なのは、ホワイトペーパーで売り込むことではなく、顧客にとって価値のある情報を伝えることです。
繰り返しになりますが、目的は「売る」ではなく、「絆を作る」ことです。良好な関係が、やがてビジネス成果に結びつきます。
次に、ホワイトペーパーを通じて、具体的に何を得られるのか、見ていきましょう。
大きく4つに分けられます。
1つめのマーケティング成果は「セールスリードを獲得する」です。
ホワイトペーパーマーケティングを行う企業の多くは、ホワイトペーパーのダウンロードと引き換えに、企業名・役職・氏名・メールアドレスなどの情報を収集します。
ごくシンプルにいえば、ホワイトペーパーがダウンロードされた数だけ、リードを獲得できる仕組みです。
ホワイトペーパーのトピックと、自社製品・サービスとの関連性をコントロールすることで、受注確度の高いリードを獲得できる点も、ホワイトペーパーならではの強みといえます。
2つめのマーケティング成果は「コンバージョンを促す」です。
前述のとおり、ホワイトペーパーでは売り込み・宣伝はすべきではありません。
しかし、たとえば、ホワイトペーパーで提供される詳細な業界分析や、類似サービスの比較表などは、コンバージョンの意思決定に大きな影響を与えます。
事実とエビデンスに基づいて、詳密に作成されたホワイトペーパーが、整然と読者を説得し、コンバージョンを強力に推進することは、珍しくありません。
3つめのマーケティング成果は「ソートリーダー(業界の権威)としての地位を確立する」です。
ソートリーダー(Thought Leader)とは、特定分野の第一人者として認められている企業や人物を指す言葉です。
ソートリーダーは、公的なイベントや会議で講演を依頼されたり、業界に関するインタビューを受けたりする、 “業界権威の地位” とイメージしてください。
優れたホワイトペーパーを発行すれば、自社がソートリーダーにふさわしいことを、証明できます。
たとえば、Googleは技術者向けの専門的な情報を含んだ、高品質なホワイトペーパーを配布していることで有名です。
▼ Googleのホワイトペーパーの例
自社の技術力の高さや専門性を、ホワイトペーパーで公開することで、社会的な承認や信頼を得られる効果があるのです。
4つめのマーケティング成果は「顧客とのリレーションシップを築く」です。
ホワイトペーパーは、マーケティングファネルのあらゆる顧客層とのコミュニケーションに活用できます。
▼ マーケティングファネル
先ほど、コンテンツマーケティングの解説で、 “価値あるコンテンツ” に触れた顧客は、以下のように感じると例を挙げました。
こういった価値を、潜在顧客〜新規顧客はもちろん、既存顧客に対しても提供することで、強固なリレーションシップ(関係)を構築できます。
ホワイトペーパーには、さまざまなフェーズにある顧客との絆を強める作用があります。
ここから、ホワイトペーパーを活用したマーケティング戦略の立て方について、具体的にお話していきます。
キーポイントが5つありますので、以下を順にクリアにしていきましょう。
最初にすべきことは、
「何のために?」
の目的を明確にすることです。
目的は、 “ホワイトペーパー上で実行すべきこと” の内容および優先順位を決める道しるべとなります。
途中で迷うことがあったら、いつでも、
「そもそも、目的は何?」
と、思考を目的に戻せばよいのです。
目的は、企業によって・事業フェーズによって・抱えている課題によってなど、さまざまです。以下に例を挙げましょう。
▼ 目的の例
自社のマーケティング課題がどこにあるのか見極めて、目的を明らかにしましょう。
次の問いは、「誰に対して?」です。
どういった特徴を持つ顧客を、読者として想定するのか、絞り込みます。
顧客像を明確にするツールとして活用したいのは「ペルソナ」です。
ペルソナとは、ターゲットとする顧客の特性をつかみ、まるで実在する人のようにリアリティを持って描きだした人物像のことです。
ペルソナを作るときのポイントは、市場調査や、実在する自社の顧客に共通する特徴、社内に蓄積された経験知など、ファクト(事実)を根拠としながら、練り上げていくことです。
データに基づかず、想像だけで作ると、間違ったペルソナができてしまうので、注意しましょう。
▼ ペルソナづくりのプロセス
1. 情報を集める | 購入履歴や製品の利用状況、顧客へのインタビュー、営業担当者へのヒアリング、外部の定量調査データなどを活用する。消費者行動分析サーピスを利用すると、「30代・男性会社員・既婚」といった属性や、利用しているウェブサイトなど、実態に近いペルソナの情報を入手できる。 |
2. 共通項を探す | 性別・年代・職業・年収などの「基本属性」、趣味・消費傾向・利用しているメディアやアプリなどの「行動属性」を洗い出し、行動の動機に共通する特徴を見つけて分類する。この共通項の見つけ方で、特定セグメントにおける代表性のあるペルソナかどうかが決まってくる。 |
3. 言語化して人物像に仕上げる | 「ペルソナシート」を使って情報を整理する。履歴書のようなスタイルで、わかりやすく人物像をまとめることができる。 |
4. 答え合わせする | 作成したペルソナを、実際の願客行動に照らし合わせて、ギャップを検証する。ペルソナが現実と大きく異なる場合、有効性が低下するため。 |
ターゲットが明確になったら、「何を?(コンテンツはどうするか?)」を検討していきます。
ターゲット像を詳細に描けていれば、ターゲットにとって必要なコンテンツは何か、おのずと見えてくるはずです。
もし、まったく見えてこない場合には、対象とする顧客について、より理解を深めて、ターゲットへの解像度を上げる必要があります。
焦らず、1つ前のターゲット設定のプロセスに戻り、じっくり取り組んでください。
コンテンツを明確化するうえで押さえるべきポイントは、以下の2つです。
まず、ホワイトペーパーの種類には、以下の6つがあります。
「ペルソナが抱える課題を解決するために、最も適切な種類はどれか?」
という視点で、種類を選定しましょう。
▼ ホワイトペーパーの種類
種類 | 解決できる顧客課題 | おすすめケース |
---|---|---|
(1) トレンド型 | 業界の最新動向や最新サービスに遅れることなく、キャッチアップできる | ・業界の変化や移り変わりが早い 〔例〕2022年アフターコロナ時代の人材業界動向 |
(2) 成功事例型 | 同業界や同規模の企業の成功事例を知ることで、サービスを導入した際の効果を想像できる | ・ネームバリューのある企業の事例がある・数字として成果の大きい事例がある 〔例〕食品業界大手5社が導入した成功事例集 |
(3) サービス比較型 | 同ジャンルで似たようなサービスが乱立する中で、「料金」「機能」「デザイン」など特徴の違いを手間なく比較できる | ・競合は多いが他社サービスにはない特徴を持つ 〔例〕AIチャットボットの20ツールを徹底比較 |
(4) イベントレポート型 | 参加できなかったイベントやセミナーの内容を得られる | ・月1回以上で継続的にセミナーを開催している 〔例〕ゼロから始めるECサイト立ち上げセミナー |
(5) ノウハウ提供型 | 製品・サービス関連や施策の専門知識を綱羅的に把握できる | ジャンルとして確立したばかりで、公になっているノウハウが少ない 〔例〕リモートワーク導入のノウハウを大公開 |
(6) 調査レポート型 | アンケートやインタビューを通して収集された、信頼度の高いデータや情報を得られる | 調査に協力的なユーザーや顧客がいる、もしくは不特定多数向けに調査費用をかけられる 〔例〕マーケティング投資に関する調査レポート |
次に、「どんなテーマにするか?」については、ペルソナが強い興味関心を寄せているトピックからアイデア出しを行います。
VOC(顧客の声)にヒントが隠れていることが多いので、自社の顧客の声を直接収集して、最適なテーマを探しましょう。
▼ VOCを収集する機会
商談時 | 見込み顧客に接する営業担当者が、商談時によく聞かれる質問を集める |
サービス提供中 | 顧客と直接接する担当者が、サービスを提供する中でよく挙がる願客課題を集める |
セミナー時 | 営業・マーケティング担当者がセミナーを開催した際に、満足度が高かったテーマや感想の声を集める |
コンテンツ提供時 | メールマガジン配信や記事公開をした際に、閲覧数やクリック数など反応が良かったテーマを集める |
その他 | 既存顧客 / リードに対して、もしくは調査会社経由での不特定多数に対して、アンケートを実施し関心事を集める |
ここまでの3つの要素(目的 / ターゲティング / コンテンツ)が固まると、実際にホワイトペーパーの作成に着手できるはずです。
ホワイトペーパーの作り方はホワイトペーパーの作り方とは?ビジネス成果を最大化する手法で解説していますので、そちらを参照してください。
と同時に、緻密に設計しておきたいのが、ディストリビューション(配布)の戦略です。
「どのように届けるか?」のチャネルを選定しましょう。
ホワイトペーパーを配布できるチャネルの選択肢として、以下があります。
以下は、大まかな目安ではありますが、コストが低い順に並べています。
種類 | 例 |
---|---|
(1) オウンドメディア | ・記事コンテンツ(ページ末尾やポップアップから誘導) ・ランディングページ ・ホワイトペーパー専用ページ ・自社メルマガ |
(2) 個別配布 | ・商談 ・メール |
(3) ウェビナー | ・参加者向け特典 ・アンケート回答のインセンティブ |
(4) Web広告 | ・リスティング広告 ・各種ディスプレイ広告 ・リターゲティング広告 ・SNS広告 |
(5) プレスリリース配信 | ・PR TIMES |
(6) 比較コンテンツ提供サイト | ・BOXIL(ボクシル) ※1 ・LISKUL(リスクル) |
(7) ビジネス系メディア | ・日経ビジネス ※2 ・東洋経済 |
どの選択肢が適しているかは、ターゲットとしている顧客層やかけられる予算によって異なります。自社にとっての最適解をよく検討することが重要です。
費用対効果については、次項でご紹介します。
最後に5つめのポイントとして、費用対効果の算出を、きっちりと行っていきましょう。
ほかのプロモーションではかならず費用対効果を計算しているのに、ホワイトペーパーとなると、計算せずにどんぶり勘定となっている企業が多く見られます。
しかし、費用対効果を算出することで、大胆な投資も可能になり、ビジネス機会を拡大できます。
▼ シミュレーション例(目安) ※ホワイトペーパー制作コストは除く
1ヶ月以内 | 1年以内 | |
---|---|---|
リード獲得単価 | 5,000〜15,000円 | 5,000〜15,000円 |
商談獲得率(商談獲得数÷リード数) | 10% | 10〜30% |
商談獲得単価(リード獲得単価÷商談獲得率) | 50,000〜150,000円 | 16,666〜150,000円 |
実際には、自社のデータをもとにシミュレーションを行ってみてください。
最後に、ホワイトペーパーのマーケティング成果を高めるポイントを3つ、お伝えしたいと思います。
本記事ではマーケティング戦略の設計部分を中心にお話しましたが、最も重要なのは「ホワイトペーパーの中身」であることは、いうまでもありません。
ターゲット顧客のニーズに応え、読んだ人が感謝の気持ちを抱くようなホワイトペーパーを作ることができれば、マーケティング成果は大幅に高くなります。
ホワイトペーパーの作り方とは?ビジネス成果を最大化する手法の記事にも目を通していただき、質の高いホワイトペーパーを目指してください。
質の高いホワイトペーパーは、それだけで強い吸引力を持ちますが、より積極的なディストリビューション(配布)設計によって、拡散力を強めることができます。
ディストリビューション設計では、まずは低コストの媒体からスモールスタートし、ホワイトペーパーの中長期的な“稼ぐ力”を見極めましょう。
リード獲得数やLTV(ライフタイムバリュー:顧客生涯価値)のデータが取れてきたら、その数値をもとに限界のリード獲得単価が算出できますから、自信を持って投資を進められます。
現在では、ホワイトペーパーはBtoBマーケティングの重要ツールです。
先にもご紹介したとおり、比較サイトやビジネス系メディアなど、ホワイトペーパー経由のリード獲得をサポートする企業が増えています。
また、弊社のようにホワイトペーパーの制作代行を請け負う支援企業もあります。
ぜひ、サポート企業と連携しながら、自社の成果最大化を目指していきましょう。
本記事では「ホワイトペーパーを使ったマーケティング」をテーマに解説しました。要点を簡単にまとめます。
ホワイトペーパー マーケティングの基本として押さえたいポイントは次のとおりです。
ホワイトペーパーの活用で期待できる4つのマーケティング成果は、以下のとおりです。
ホワイトペーパーのマーケティング戦略の立て方として、5つのポイントを解説しました。
ホワイトペーパーのマーケティング成果を高めるために、次のことを意識してみましょう。
近年のBtoBマーケティングは、ホワイトペーパーを巧みに活用している企業の躍進が目立ちます。本記事を、ホワイトペーパーを武器に変える一助としていただければ幸いです。
さらにノウハウを知りたい方むけに「ホワイトペーパー制作完全ガイダンス」をご用意しました。