近年では、BtoB企業を中心にホワイトペーパーを活用したマーケティング施策に取り組む企業が増えてきました。
ホワイトペーパーを作りたいと考えているご担当者様のお話を伺うと、
「何から考えればよいのかわからない」
「どんなテーマが良いのかわからない」
といったお悩みが多く寄せられました。そこで本記事では、ホワイトペーパー施策を進めるにあたり、最初に着手すべきこと、テーマの決め方など、これからホワイトペーパー施策に取り組む方が気になるポイントについて、解説しています。
ホワイトペーパーとは、一言でいうと、自社が持つデータやノウハウなどの専門知識、業界内の最新動向をまとめた資料のことです。
業界で課題とされているテーマについて、企業が持っている専門知識を最大限に活かし、解決に役立つホワイトペーパーを公開することで、自社の専門性の証明や権威性の向上につながります。
ホワイトペーパーと混同されやすいのが営業資料ですが、役割が大きく異なります。以下の表にそれぞれの違いをまとめました。
ホワイトペーパー自体は、製品・サービスを宣伝するものではありません。
しかし、ホワイトペーパーによって示された専門知識の高さや、根拠を持った説得力のある主張によって、企業の専門性や権威性を示すことができるため、間接的にビジネスにプラスの影響を与えます。
ホワイトペーパーは、主に以下の6種類に分類できます。
種類 | 目的 | 内容 |
---|---|---|
ノウハウ提供型 | 自社サービスで解決できる悩みを抱えている見込み顧客リストの作成 | 〇〇の解決方法、〇〇変更で企業がやるべきことの解説、〇〇の書き方/作り方/方法 など |
成功事例型 | サービスの導入に不安を抱えている検討顧客のリストの作成 | サービスを選んだ理由・きっかけ、導入後の効果 など |
サービス比較型 | 複数のサービスを比較検討している検討顧客のリストの作成 | サービスごとの特徴、機能や料金の比較、サービスを選ぶポイントの解説 など |
イベントレポート型 | 悩みの解決方法を模索している見込み顧客のリスト作成 | イベントやセミナーの内容まとめ、登壇者情報 など |
トレンド型 | 特定の業界・ジャンルに関心がある幅広い潜在顧客のリスト作成 | 業界の最新情報、業界の旬な話題、サービスに関する最新情報 |
調査レポート型 | 解決するべき課題に気が付いていない潜在顧客のリスト作成 | 業界の市場調査、顧客のアンケート結果、業界の動向分析 など |
上記の種類以外にも、他の種類のホワイトペーパーを見たことがあるという方もいるかもしれませんが、弊社の経験上、世の中に普及しているホワイトペーパーは「ノウハウ提供型」「成功事例型」「サービス比較型」「イベントレポート型」の4種類で9割を占めます。
そもそもホワイトペーパーとは何かをもっと詳しく知りたい方は、以下の記事で詳しく解説していますので、ご覧ください。
ホワイトペーパーを使う目的やターゲットが曖昧なまま、施策を進めてしまうケースが見られますが、成果を出すために、まずはホワイトペーパーを配信するターゲットを明確にする必要があります。
最低限、以下の2つを事前に決めることで、ホワイトペーパーの施策が進めやすくなるでしょう。
それぞれ詳しく解説していきます。
まず最初にすべきことは、「何のためにホワイトペーパーを作成するのか」という目的を明確にすることです。
目的は、企業によって・事業フェーズによって・抱えている課題によってなど、さまざまです。
▼ 目的の例
1.潜在顧客の獲得
2.潜在顧客の見込顧客化
3.見込顧客の獲得
4.見込顧客の検討顧客化
5.検討顧客の獲得
6.検討顧客の新規顧客化
例えば、とにかく数多くリードを集めたいと考えるのであれば、「1.潜在顧客の獲得」を目的に置き、より多くの人に関心を持ってもらえるホワイトペーパーを作るのが良いです。
一方で、リードの数よりも質を重視したい、より商談につながるリードを集めたい、と考えるのであれば、「3.見込顧客の獲得」を目的として見込顧客の課題解決につながるようなホワイトペーパーを作るようにします。
次は、「誰に対して?」を考えていきます。
どういった特徴を持つ顧客を、読者として想定するのか、絞り込みます。
顧客像を固めるときは、市場調査や、自社の現在の顧客に共通する特徴、社内に蓄積された経験知など、ファクト(事実)を根拠として、練り上げていきましょう。
これまで解説した内容は、以下の記事の「ホワイトペーパーの作り方【Part 1】企画・テーマを策定する」でも詳しく解説しています。
ホワイトペーパーを作る目的とターゲットが決まれば、ホワイトペーパーの企画・テーマを考えやすくなります。
「どんなテーマのホワイトペーパーなら、最も目的を達成できるか?」という視点から、アイデア出しをして、企画・テーマを選定しましょう。
また、どのターゲットに向けてホワイトペーパーを作るかによって、企画・テーマ選定の方法が変わってきます。特に選定時に悩むことが多い潜在顧客、見込顧客の方法を紹介します。
潜在顧客は自社の製品・サービスについて十分に知識がなく、その必要性を認識していない層が中心です。
そのため、業界の基本的な情報やトレンドなどの情報を提供するホワイトペーパーが良いでしょう。アイデア出しツールとして、以下のようなものが活用できます。
ツール | 得られる情報 |
---|---|
Googleのキーワードプランナー キーワードリサーチツール「ラッコキーワード」 | トレンドとなるキーワードを見つけられる |
SNS(例:Twitter) | 顧客の潜在ニーズの発見に役立つ |
見込顧客は、自社の製品・サービスで解決できる課題を持っている層です。そのため顧客の課題解決につながるノウハウを提供するホワイトペーパーが合っています。
ツール | 得られる情報 |
---|---|
顧客の声(例:商談時、アンケート調査) | 顧客が抱えているリアルな課題が分かる |
競合他社が発行しているホワイトペーパー | 別の観点での課題発見につながる ※ターゲットが同じ、もしくは類似している場合 |
他社の広告(例:Facebook 広告ライブラリ) |
各ターゲット毎におすすめのホワイトペーパーのテーマ例は以下の通りです。
潜在顧客 | ⾃社の製品・サービスで解決できる 課題を持つ可能性がある | いま話題の○○のトレンド |
○○人に聞いた △△実態調査 | ||
⾒込み顧客 | ⾃社の製品・サービスで解決できる 課題を持っている | ○○における課題と解決策 |
○○サービス導入のポイント | ||
検討顧客 | 導⼊を検討するにあたり、 ⾃社の製品・サービスと 他社の製品・サービスを⽐較する | ○○サービスの選び方 |
○○の導入事例集 |
ホワイトペーパーの作成手順についても簡単に紹介します。ホワイトペーパーの作成に必要な工程は主に以下4つです。
企画・テーマ策定~デザイン完成まで、制作会社に頼んだ場合でも1ヶ月程度はかかると見積もっておきましょう。
【Part 1】企画・テーマを策定する
– 顧客フェーズ
– 顧客像
– マーケティング課題
– テーマの選定
【Part 2】構成を作る
– ストーリーラインをイメージする
– 構成案としてアウトプットする
【Part 3】文章を作る
– タイトル
– 本文
【Part 4】デザインを作る
– 情報をわかりやすくデザインに落とす
– 表紙
上記の詳細は以下の記事でも詳しく紹介していますので、あわせてご覧ください。
最後にホワイトペーパーでよくある失敗例を押さえておきましょう。
ホワイトペーパーは営業サービス資料とは異なり、あくまでも顧客の課題解決のための資料です。
潜在顧客・見込顧客向けのホワイトペーパーの場合、ダウンロードする顧客は自社の製品・サービスに必ずしも興味を持っているわけではありません。
課題解決のためのデータやノウハウを求めて、ダウンロードしたのに、実際は製品・サービスの紹介ばかりだった、と感じられてしまうと満足度の低下につながります。
自社製品・サービスを紹介する場合は、テーマとなる課題の背景・要因や解決案を紹介したうえで、より課題解決を加速させる方法として製品・サービス導入という選択肢も案内するというスタンスを取りましょう。
顧客が途中でつまずくことなく、ホワイトペーパーの内容をスムーズに理解してもらうためには、専門用語はできるだけ使わず、誰にでも伝わる言葉で作成する必要があります。やむを得ず、専門用語を使う場合は、必ず注釈を入れましょう。
また業界の中にいると、専門用語だと気づかず、使ってしまうケースもあります。
そのため、専門用語をあまり知らない社員に、読んでもらうなどして、確認してもらうと良いでしょう。
ホワイトペーパーのタイトルを考える際にも注意が必要です。タイトルの失敗としてあるのが、「タイトルを巧みに練り上げた結果、ダウンロード数は多いが、商談にはつながらない」という事態です。
これは、タイトルによって過剰に高められた期待値に対して、ホワイトペーパーの中身が釣り合っておらず発生していることが多いです。
顧客からしてみれば、期待を煽られてから裏切られることになるので、企業に対する不信感にもつながります。
そのため、ホワイトペーパーの中身と連動した、ベストなタイトルを推敲しましょう。
また、タイトルに対して、中身が足りないと感じたら、中身もブラッシュアップしてください。相互に改善を加え、全体の成果を高める意識が大切です。
タイトルの付け方のコツについては以下の記事でも解説しているので、ぜひ参考にしてください。
顧客にホワイトペーパーを提供するだけでは、成果は得られません。
ホワイトペーパーで接点を持った顧客に対して、後日コミュニケーションを取るなどして、「課題の認識」「解決策の検討」といった次のフェーズへと促すためのアクションをこちらから起こすことが大事です。
顧客とのコミュニケーションにおいて、1回目の電話コールでつながるのは30%、回数を重ねて6回目のコールでつながるのが90%といわれています。
参考:Bright Orange Thread「Fast Reply Time is Key to Sales in the Propane Industry」
そのため、継続的に追客できる営業体制を整え、機会損失を防ぐ必要があります。
ホワイトペーパーは顧客の検討度合いのばらつきが起こりやすいです。なぜなら、通常のお問い合わせやサービス資料請求と異なり、顧客はホワイトペーパーのノウハウを求めてダウンロードしており、製品・サービス導入に関心があるとは限らないからです。
そのため、商談につながらないのはセールス担当者の追客対応が原因か、広告露出先や資料の中身に原因があるか判断するため、資料請求フォームの項目でニーズ度合いを収集するようにしましょう。
項目例:「事例を聞きたい」「相談したい」「情報収集のみ」
ダウンロード時に「相談したい」を選んでいれば課題顕在層であり、「情報収集のみ」であれば潜在層に寄っていると判断しやすくなります。セールス担当者が架電前に顧客の温度感を把握できるので、どのように架電をすべきか対策も立てやすくなります。
ホワイトペーパーの施策においてもP(計画)D(実行)C(検証)A(改善)を回すことが欠かせません。最初の計画が肝心となるKPI設計についてお伝えします。
ホワイトペーパー施策のKPIは、短期(1ヶ月~3ヶ月)と中期(3ヶ月~1年間)の視点で設計するのが好ましいです。
ホワイトペーパーは潜在顧客・見込顧客の獲得に活用されることが多く、ダウンロードされてから受注につながるまでに一定期間が必要なケースが少なくありません
まだ課題が明らかになっていない顧客や、課題は明らかであるものの検討には至っていない顧客が存在するからです。
そのため短期と中期に分けてKPIを設計し、適切に施策を評価していきます。
例えば、新規リードの獲得数が想定していたKPIに達しなかった場合、マーケティング施策に課題があると判断し、広告施策や配信チャネルなどの見直しに動くことができます。受注数のKPIが達成できなかった場合、インサイドセールスのアクションに課題がある可能性を仮説立てする、といった具合にボトルネックとなっている部分が見極めやすくなります。
本記事では、ホワイトペーパー施策を進めるうえで知っておきたいポイントをテーマに解説してきました。
簡単に要点をまとめます。
ホワイトペーパー施策を進める前に
最低限、上記2つは明確にしましょう。
また、企画・テーマ選定のポイントは、ホワイトペーパーのターゲットによって変わります。
最後に、ホワイトペーパーでよくある失敗例として、以下5つを押さえておきましょう。実際にホワイトペーパーを作成する際に、これらに当てはまっていないか確認してみてください。
ホワイトペーパー施策の実施時のポイントとして、本記事を役立てていただければ幸いです。
さらにノウハウを知りたい方むけに「ホワイトペーパー制作完全ガイダンス」をご用意しました。