マーケティング手法のひとつとして、近年コンテンツマーケティングが注目されています。2010年頃にアメリカで生まれた言葉で、日本では2014年頃から注目されるようになりました。
コンテンツマーケティングに取り組もうとする場合、選択肢の一つとしてホワイトペーパーが挙がるケースも多いかと思います。
しかし具体的にどのようにホワイトペーパーを作ればいいか、効果はあるのかといった疑問をお持ちの方もいるはずです。
そこで、本記事では、コンテンツマーケティングの基本を解説するとともに、ホワイトペーパーの制作時に押さえておきたいポイントや戦略の立て方などを解説します。
コンテンツマーケティングとは、自社の顧客になりうるターゲットに対して、オンライン・オフライン問わず、価値ある情報(コンテンツ)を提供して、潜在顧客・見込顧客と接点を作り、最終的に収益につなげることを目的としたマーケティング手法です。
コンテンツマーケティングでは、顧客にとって有益なコンテンツを継続して提供し続けることで、信頼を獲得していくことが重要なポイントです。
コンテンツマーケティングというと、オウンドメディアの運用をイメージする人が多いですが、あくまでそれはコンテンツマーケティングの手法の一つです。
コンテンツマーケティングにおける「コンテンツ」とは、顧客が求める「情報」を何らかの形で表現したものだと捉えると良いでしょう。
そのため、コンテンツは記事だけでなく、ホワイトペーパーやメルマガ、セミナー、オフラインのイベントといったものも含まれます。
コンテンツマーケティングの概念を踏まえたうえで、ここからは、コンテンツマーケティングにおいて、ホワイトペーパーをどのように活用するのかについて解説していきます。
ホワイトペーパーとは、一言でいうと、自社が持つデータ・ノウハウなどの専門知識、業界内の最新動向をまとめた資料のことです。
業界で課題とされているテーマについて、企業が持っている専門知識を最大限に活かし、解決に役立つホワイトペーパーを公開することで、自社の専門性の証明や権威性の向上につながります。
そもそもホワイトペーパーとは何かを詳しく知りたい方は、以下の記事で詳しく解説していますので、ご覧ください。
<ホワイトペーパー例>
一般的にホワイトペーパーは、ダウンロードを無料とする代わりに、企業名やメールアドレスなどの情報の入力を求めます。
自社の製品・サービスを知らない、検討していない顧客(潜在顧客)でも、ホワイトペーパーのテーマに関心があったり、役に立ちそうだと思えば、ダウンロードに至るため、新規リードの獲得につながります。
また、自社の課題に対して、情報収集段階の顧客にとって、相談の問い合わせやサービス資料の請求はハードルが高いものに感じてしまいます。
そういった顧客に対しては、広く興味を持ってもらえるホワイトペーパーを作成し、顧客情報と引き換えにダウンロードできるようにしておけば、問い合わせやサービス資料のダウンロードに至る前の顧客でも新規リードとして情報を取得できます。
ホワイトペーパーが最も価値を発揮する点としては、ホワイトペーパーというツールを通じて顧客に「価値」を提供することで、顧客と良好な関係が築けることです。
ホワイトペーパーで、顧客にとって価値ある情報や、抱えている悩みを解決する情報を提供することで、顧客からの信頼につながります。
価値あるホワイトペーパーに触れた顧客の心の中に芽生えるのは、例えばこんな感情です。
その結果、自社で解決できる課題を顧客が抱えたときに、「あの会社の話を聞いてみようかな」と、ビジネス上の取引に発展することが期待できます。
リード獲得・リード育成において、ホワイトペーパーはその他のコンテンツマーケティング手法と組み合わせて活用されることで、相乗効果を発揮します。
オウンドメディアに流入してくる顧客に対して、ホワイトペーパーのダウンロードを促すことで、リード獲得数の増加が期待できます。
オウンドメディアでは、自社の製品・サービスに関連のあるキーワードで記事を作成して、上位表示させられるようにSEO対策(検索エンジンでコンテンツを上位表示させる取り組みを行ないます。
その結果、ページ閲覧数は伸びたとしても、その中で、サービス紹介の資料請求やお問い合わせしようと思うページ閲覧者はごくわずかです。
ホワイトペーパーであれば、ノウハウの提供がメインであり、コンバージョンのハードルが低いため、リードとして獲得しやすくなります。
まずはリードとして獲得し、その後のメルマガやセミナーによる情報提供などでナーチャリング(リード育成)をしていくといった連携施策をとることもできます。
メルマガの購読者の検討フェーズごとに適切なホワイトペーパーを用意し、ダウンロードを促すことで、リードの育成につながります。
例えば、過去に失注となった顧客にメルマガで継続的に、役立つ情報をまとめたホワイトペーパーを配信することで、改めて自社に興味を持ってもらえる可能性が高まります。
その他、製品・サービス導入の検討度合いが高い顧客には「導入事例集」「サービス比較資料」などの具体的な効果を示すホワイトペーパーを提供することで、受注につながる可能性も高められます。
ホワイトペーパーをセミナーアンケートの回答特典として、活用することも1つの方法です。
アンケートの回答者だけに、特典としてホワイトペーパーを配布することで、回答率のアップに役立ちます。
セミナーと関連ある内容のホワイトペーパーであれば、より理解度を深めてもらえることも期待できます。
先述した通り、コンテンツマーケティングでは、コンテンツの質が何よりも重要となります。
そのため、ホワイトペーパーを作るときには、
「リードをたくさん取れるホワイトペーパー」ではなく、
「読んだ人が感動するほど、内容に価値のあるホワイトペーパー」を作る
……という視点を意識しましょう。
また、やみくもに着手するのではなく、適切な手順に従って作ることで質の高いホワイトペーパーが作成できます。基本的な流れは、以下のとおりです。
上記の詳細はホワイトペーパーの作り方とは?ビジネス成果を最大化する手法にて解説しています。参考にしながら、ホワイトペーパーづくりを進めてください。
ホワイトペーパーを活用したマーケティング戦略の立て方について解説します。この内容は他のコンテンツマーケティング戦略を考えるうえでも活用できるものですので、ぜひ参考にしてください。キーポイントは以下の5つです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
まず最初にすべきことは、「何のために?」の目的を明確にすることです。
目的は、 “ホワイトペーパー上で実行すべきこと” の内容および優先順位を決める道しるべとなります。
目的は、企業によって・事業フェーズによって・抱えている課題によってなど、さまざまです。以下に例を挙げましょう。
▼ 目的の例
1.潜在顧客の獲得
2.潜在顧客の見込顧客化
3.見込顧客の獲得
4.見込顧客の検討顧客化
5.検討顧客の獲得
6.検討顧客の新規顧客化
自社のマーケティング課題がどこにあるのか見極めて、目的を明らかにしましょう。
次は、「誰に対して?」を考えていきます。
どういった特徴を持つ顧客を、読者として想定するのか、絞り込みます。
顧客像を固めるときは、市場調査や、実在する自社の顧客に共通する特徴、社内に蓄積された経験知など、ファクト(事実)を根拠としながら、練り上げていきましょう。
また、コンテンツマーケティングで、顧客像を明確にするツールとしては「ペルソナ」を活用することもあります。
ペルソナとは、ターゲットとする顧客の特性をつかみ、まるで実在する人のようにリアリティを持って描きだした人物像のことです。
▼ ペルソナの例
ターゲットが明確になったら、「何を?(コンテンツはどうするか?)」を検討していきます。
ターゲット像を詳細に描けていれば、ターゲットにとって必要なコンテンツは何か、おのずと見えてくるはずです。
もし、全く見えてこない場合には、対象とするような顧客と直接話すなど、より理解を深めて、ターゲットへの解像度を上げる必要があります。
コンテンツを明確化するうえで押さえるべきポイントは、以下の2つです。
まず、ホワイトペーパーの種類には、以下の6つがあります。「ターゲット顧客が抱える課題を解決するために、最も適切な種類はどれか?」という視点で、種類を選定しましょう。
▼ ホワイトペーパーの種類
次に、「どんなテーマにするか?」については、ターゲット顧客が強い興味関心を寄せているトピックからアイデア出しを行います。
テーマについては、顧客の声にヒントが隠れていることが多いので、自社の顧客の声を直接収集して、最適なテーマを探しましょう。
▼ 顧客の声を収集する機会
打ち合わせ時 | 営業担当者やコンサルタントが、打ち合わせ時によく聞かれる質問や顧客課題をなど集める |
セミナー時 | 営業・マーケティング担当者がセミナーを開催した際に、満足度が高かったテーマや感想の声を集める |
コンテンツ提供時 | メールマガジン配信や記事公開をした際に、閲覧数やクリック数など反応が良かったテーマを集める |
ここまでの3つの要素(目的 / ターゲティング / コンテンツ)と同時に、緻密に設計しておきたいのが、ディストリビューション(配布)の戦略です。
「どのように届けるか?」のチャネルを選定しましょう。
ホワイトペーパーを配布できるチャネルの選択肢として、以下があります。
種類 | 例 |
---|---|
(1) 自社サイト | ・記事コンテンツ ・ランディングページ ・お役立ち資料一覧ページ ・プレスリリース |
(2) 個別配布 | ・商談 ・メール |
(3) Web広告 | ・リスティング広告 ・各種ディスプレイ広告 ・リターゲティング広告 ・SNS広告 |
(4) 比較コンテンツ提供サイト | ・BOXIL(ボクシル) ・LISKUL(リスクル) |
(5) ビジネス系メディア | ・日経ビジネス ・東洋経済 |
どの選択肢が適しているかは、ターゲットとしている顧客層やかけられる予算によって異なります。自社にとっての最適解をよく検討することが重要です。
最後に5つめのポイントとして、費用対効果の算出を、きっちりと行なっていきましょう。
他のプロモーションでは必ず費用対効果を計算しているのに、ホワイトペーパーとなると、計算せずにどんぶり勘定となっている企業も見られます。
しかし、費用対効果の算出することで、大胆な投資も可能になり、ビジネス機会を拡大できます。
費用対効果を算出する際は、最低限として以下3つを算出するのが良いでしょう。
1.リード獲得単価(リード獲得にかかった費用÷リード獲得数)
2.商談獲得率(商談獲得数÷リード獲得数)
3.商談獲得単価(リード獲得単価÷商談獲得率)
それぞれの算出方法を説明します。
リード獲得単価は、リード獲得にかかった費用÷リード獲得数で求められます。
(例)100万円の広告費用をかけて200件のリードを獲得した場合、「1,000,000÷200=5,000」で、リード獲得単価は5,000円。
商談獲得率は、商談獲得数÷リード獲得数で求められます。
(例)200件のリードに対して、商談を20件獲得した場合、
「20÷200=0.1」で、商談獲得率は10%。
商談獲得単価は、リード獲得単価÷商談獲得率で求められます。
(例)リード獲得単価5,000円で商談獲得率は10%(0.1)の場合、
「5,000÷0.1=50,000」で、商談獲得単価は50,000円。
▼ シミュレーション(目安数値)
1ヶ月以内 | 1年以内 | |
---|---|---|
リード獲得単価 | 5,000〜15,000円 | 5,000〜15,000円 |
商談獲得率(商談獲得数÷リード数) | 10% | 10〜30% |
商談獲得単価(リード獲得単価÷商談獲得率) | 50,000〜150,000円 | 16,666〜150,000円 |
実際には、自社のデータをもとにシミュレーションを行なってみてください。
本記事では、コンテンツマーケティングにおけるホワイトペーパーの活用方法をテーマに解説しました。
要点を簡単にまとめます。
コンテンツマーケティングにおけるホワイトペーパーの役割として、大きく以下の2つが挙げられます。
そして、コンテンツマーケティングでは、コンテンツの質が何よりも重要となるため、ホワイトペーパーを作成するには、
「リードをたくさん取れるホワイトペーパー」ではなく、「読んだ人が感動するほど、内容に価値のあるホワイトペーパー」を作る……という視点を意識しましょう。
ぜひ本記事を、ホワイトペーパーを武器に変える一助としていただければ幸いです。
さらにノウハウを知りたい方むけに「ホワイトペーパー制作完全ガイダンス」をご用意しました。