ビジネス成果をもたらす優れたホワイトペーパーを作るには、「正しく戦略的に練られた構成」が不可欠です。
しかしながら、多くのホワイトペーパーの構成は、“何となく感覚的”に作られていて、戦略的な意図が見られません。それが原因で、成果が少なくなっています。
本記事では、以下を解説します。
的確な知識に基づいて作られた構成は、読む人の心をつかんで納得感を増し、ビジネス成果を倍増させてくれます。
本記事を通じて、「ホワイトペーパーの構成スキル」を身につけていただければと思います。
最初に、
「ホワイトペーパーの構成が重要なのは、なぜか?」
というお話からしていきましょう。
構成の良し悪しが、“何に・どう影響するのか?” を理解すると、それだけでも構成に対する意識が変わり、構成の質が変わるからです。
重要な理由は、大きく3つあります。
それぞれ見ていきましょう。
1つめの理由は「明快な構成は読者の理解を深める」からです。
ホワイトペーパーは、スピーチやプレゼンテーション、論文などと同様に、
「読み手に対して、情報をわかりやすく伝える」
ことに意義があります。
情報をわかりやすく伝えるためには、構成をよく練らなければなりません。
というのも、認知理論の第一人者であるカリフォルニア大学のリチャード・メイヤー教授の研究によれば、
〈プレゼンテーションに明快な構成を用いることで、オーディエンスの理解が深まる〉
とわかっています。
明快な構成は、ホワイトペーパーの読者の理解を深め、伝えたいことを適切に伝える効果があるのです。
2つめの理由は「意義ある構成によって設計された情報は正確に記憶される」からです。
ビジネス成果を目的としてホワイトペーパーを作成する場合、
「ホワイトペーパーの内容を、読者である顧客に覚えてほしい」
というケースは多いでしょう。
ホワイトペーパーに掲載した情報を、読者の記憶に残すために、カギを握るのが構成です。
スタンフォード大学のWebサイトに掲載されている情報によれば、
〈構成によって構造化された情報は、最大で40%、正確に記憶される〉
といいます。
構成を意識せずに自由形式で情報を並べても、読者はすぐに内容を忘れてしまいます。
構成を練ることで、正確に記憶してもらえるホワイトペーパーを作りましょう。
参考:Stanford Graduate School of Business
3つめの理由は「意図なく作られた構成だと失敗要因が分析しづらくなる」からです。
感覚的にホワイトペーパーの内容を書き進めて作成した場合、ホワイトペーパーから得られた結果が悪くても、その敗因を突きとめるのが難しくなります。
掲載する情報の魅力がなかったのか、情報が良くても構成が読みづらかったのかなど、敗因がわからなければ、効果的な改善ポイントを発見できないので、勝ちパターンを見いだすまでに時間がかかります。
そこで、結果はどうなるにせよ、「意図して構成を作る」ことが重要なのです。
ここからは実践の話に移りましょう。
まず、ホワイトペーパーの基本型として、以下の構成要素を押さえてください。
ひとつずつ解説します。
1つめの構成要素は「表紙」です。
表紙には、以下の役割があります。
表紙において、とくに重要なのが「タイトル」です。
タイトルは、
「あなたが抱えている問題は何か、私たちは知っていて、その解決策はここにあります」
と、ターゲット顧客に伝え、目を留めてもらう必要があります。
タイトルの付け方、および表紙のデザインは、非常に重要なポイントなので、それぞれ個別の記事に詳細をまとめました。
上記の記事に目を通しながら、ブラッシュアップしてください。
2つめの構成要素は「はじめに(イントロダクション)」です。
この導入部分がよくできていれば、読者の心をつかみ、読み続けてもらうことができます。
「はじめに」で伝えるべきことは、以下の2つに集約されます。
▼ 伝えるべきこと
読者が直面している悩みに寄り添い、このホワイトペーパーを読むと得られる、よりよい未来や利益を描いてください。
ここで避けたいことは、自社のサービスに関する宣伝、読者に寄り添わない自分語り、ホワイトペーパーの要約などです。
あくまでも、読者の側に立って、前述の“伝えるべきこと”に集中しましょう。
3つめの構成要素は「目次」です。
目次には、2つの役割があります。
ホワイトペーパーは、いきなり本文を書き出すのではなく、大枠として概要を把握してから読み進めてもらうことで、読者の理解がスムーズになります。
また、読者にとって必要な情報に瞬時にアクセスできるよう、目次からリンク設定されているPDFファイルは、カスタマーエクスペリエンス(CX、顧客体験)向上の観点から優れています。
とくに、数十ページに及ぶPDFファイルで、読者が何度も読み直すようなホワイトペーパーは、リンクを作成しておきましょう。
参考:PDF 文書内にリンクを作成する方法 (Acrobat XI/Acrobat)
4つめの構成要素は「本文」です。
本文の構成パターンは、作りたいホワイトペーパーの種類によって変わります。
▼ ホワイトペーパーの種類
種類 | 解決できる顧客課題 | おすすめケース |
(1) トレンド型 | 業界の最新動向や最新サービスに遅れることなく、キャッチアップできる | ・業界の変化や移り変わりが早い 〔例〕2022年アフターコロナ時代の人材業界動向 |
(2) 成功事例型 | 同業界や同規模の企業の成功事例を知ることで、サービスを導入した際の効果を想像できる | ・ネームバリューのある企業の事例がある・数字として成果の大きい事例がある 〔例〕食品業界大手5社が導入した成功事例集 |
(3) サービス比較型 | 同ジャンルで似たようなサービスが乱立する中で、「料金」「機能」「デザイン」など特徴の違いを手間なく比較できる | ・競合は多いが他社サービスにはない特徴を持つ 〔例〕AIチャットボットの20ツールを徹底比較 |
(4) イベントレポート型 | 参加できなかったイベントやセミナーの内容を得られる | ・月1回以上で継続的にセミナーを開催している 〔例〕ゼロから始めるECサイト立ち上げセミナー |
(5) ノウハウ提供型 | 製品・サービス関連や施策の専門知識を綱羅的に把握できる | ジャンルとして確立したばかりで、公になっているノウハウが少ない 〔例〕リモートワーク導入のノウハウを大公開 |
(6) 調査レポート型 | アンケートやインタビューを通して収集された、信頼度の高いデータや情報を得られる | 調査に協力的なユーザーや顧客がいる、もしくは不特定多数向けに調査費用をかけられる 〔例〕マーケティング投資に関する調査レポート |
それぞれの詳細は、以下の記事にまとめています。参考にしながら、本文の構成を練り上げましょう。
※この後でご紹介する実践例の「3. ホワイトペーパー構成案の作成方法とサンプル例」も、ご覧ください。
5つめの構成要素は「結論」です。結論は、ホワイトペーパーの種類によっては、自社サービスの紹介となるケースもあります。
結論の役割は、以下のとおりです。
ホワイトペーパー内容を簡単にまとめておさらいすることで、キーポイントを顧客の記憶に正確に残すように意識しましょう。
結論となるソリューションが、自社サービスの場合には、サービス紹介の構成になります。
6つめの構成要素は「自社について」です。会社概要やお問い合わせのページが、このセクションにあたります。
ここで伝えることは、以下のとおりです。
簡単なページではありますが、ホワイトペーパーの最後の読後感に「信頼」を醸成するうえで、重要な役割を担います。
専門性・権威性・信頼性の3要素を意識した自社に関する情報を、掲載しましょう。
ここまでの知識を踏まえつつ、実務では「構成案」を作成します。
構成案の作成方法と、サンプル例をご紹介しましょう。
構成案とは、ホワイトペーパーのすべてのセクション(PowerPointならスライド)の「タイトル」と「概要」を示したものです。
「どのような情報を、どのような順番で出して、読み手にどのように理解してもらい、感じてもらうか?」
を設計するための設計図と考えてください。
構成案を作成するときには、悩みを抱えている読者が目の前にいて、その人に話しかけるようにストーリーを作ることを心掛けましょう。
ストーリー展開にはさまざまなパターンがあります。まずは最も代表的な以下のパターンから習得してください。
実際の構成案の例を見てみましょう。参考にしながら、自社のホワイトペーパーの作成を進めてみてください。
P. 1 | 表紙 | はじめてのITエンジニア採用を成功させるコツ |
P. 2 | はじめに | 当ホワイトペーパーの背景や目的の説明 |
P. 3 | 目次 | 各スライドのタイトルと対応するページ数の一覧を掲載 |
P. 4 | エンジニア採用市場の課題感 | エンジニアをはじめとしたIT人材が年々不足していることが分かるような調査データを掲載 |
P. 5 | エンジニア採用課題の要因分析 | 「優秀なエンジニアが見つからない」「求められる報酬を出すことができない」「エンジニア層に自社の存在を知ってもらえていない」など課題と要因を列挙 |
P. 6 | エンジニア採用課題には、エンジニア理解が解決の鍵 | 一方で、有名でない中小企業であったとしても、理想的なエンジニアの採用に成功しているケースは存在し、それは働く仕事環境や人、事業の特徴などが、一部のエンジニアに魅力的に感じられたからであるため、それを理解して打ち出していけるようにすることが重要であるという説明 |
P. 7 | エンジニア理解の解決策(1)エンジニアが書く公開記事を読む | エンジニアの知識記録・共有サービスをはじめ記事を読むことで、エンジニアが何に関心を持ち、何に喜びや怒りを感じるのかを知るという説明 |
P. 8 | エンジニア理解の解決策(2)直接エンジニアに話を聞く | 知り合いにエンジニアを紹介してもらったり、カジュアル面談サービスを使ったりして話をすることで、自社のエンジニア募集要項にフィードバックをもらうといった説明 |
P. 9 | エンジニア理解の解決策(3)プログラミングを勉強してみる | 本やプログラミングサイトを参考に実際にコードを書いてみることで、エンジニアと円滑なコミュニケーションが可能にできるようにするという説明 |
P. 10〜 | サービス紹介 | サービス概要・顧客事例・会社概要・お問い合わせボタンを掲載 |
最後に、作成した構成案をチェックするポイントを3つ、お伝えします。
1つめのポイントは「他者の視点から見て説得力があるか?」です。
このポイントをチェックするよい方法は、誰か1人、協力者を見つけ、その人に向かって構成案をもとにホワイトペーパーの内容を話すことです。できればターゲット顧客に近い属性の人が好ましいでしょう。
声に出して相手に説明することで、自分の中にも客観性が生まれます。
自分で説明しづらい部分や、補足説明が必要になった箇所はメモしておき、構成案を修正するヒントにしましょう。
一通り説明が終わったら、協力者からフィードバックをもらいます。フィードバックを反映させながら、構成案をブラッシュアップしていきましょう。
2つめのポイントは「次のページを読みたくなるか?」です。
理想的な構成は、ホワイトペーパーの表紙を目にしたら、思わずページをめくりたくなり、1ページ読むと、また続きが読みたくなり……という具合に、最後まで読み切りたくなる構成です。
単にコンテンツ要素を順番に配置するのではなく、“続きが気になるストーリー構成”を意識して展開することで、読者を最後まで引きつけることができます。
これも、第三者の視点から客観的にチェックしてもらうと、効果的です。
3つめのポイントは「冒頭で高めた期待値を超えているか?」です。
この記事の前半で、以下のようにお伝えしました。
タイトルは、
「あなたが抱えている問題は何か、私たちは知っていて、その解決策はここにあります」
と、ターゲット顧客に明確に伝え、目を留めてもらう必要があります。
「はじめに」で伝えるべきことは、以下の2つに集約されます。
▼ 伝えるべきこと
読者は、表紙(タイトル)や「はじめに」を読んで、期待を持ってホワイトペーパーを読み進めます。いわば、伏線が敷かれた状態です。
最後まで読み終えたときに、しっかり伏線を回収できている構成になっているか、よく確認しましょう。
「このホワイトペーパーには、私が期待した答えが、本当に書いてあった」
と読者が十分に満足したとき、そのポジティブな顧客感情が、ビジネス成果へとつながっていきます。
本記事では「ホワイトペーパーの構成」をテーマに解説しました。要点を簡単にまとめます。
ホワイトペーパーで「構成」が重要な理由として、以下が挙げられます。
ホワイトペーパーを構成する基本要素は次の6つです。
ホワイトペーパーの構成案は以下に沿って作るとスムーズです。
ホワイトペーパー構成の3つのチェック項目として、以下をご紹介しました。
構成にこだわることで、効率的にホワイトペーパーの成果を高めることができます。さっそく、構成案の作成にチャレンジしてみてください。
さらにノウハウを知りたい方むけに「ホワイトペーパー制作完全ガイダンス」をご用意しました。